眠れない夜が続く。







「おはよう」
出かける仕度を終えてダイニングに出てきたサスケに声をかける。
いささか驚いた瞳の黒目が瞬いた。
「サスケくん、朝ご飯は食べていくんでしょう? 簡単なものなら準備してるよ」
ね、と笑って、サクラは朝食をテーブルに並べた。
サスケは一瞬躊躇ったようだったが、無言でテーブルについて出された朝食を食べ始めた。
「お昼ご飯はどうする? おにぎりだけ作ってあるけど」
「もらう」
皿に盛ってあったおにぎりを幾つか包んで振り返る。
「今日、帰りは遅くなるの?」
今日は小隊編成の打ち合わせだけだから早いのだとだけ言って、食事を進める。
サクラは頬杖を突いて、サスケが黙々と食べていく様を見つめる。
その視線が気になったのか、なんだとサスケの黒い瞳が見上げてきた。
「夫婦みたいだね」
サクラが笑うと、サスケの眉は怪訝に顰められた。
「“夫婦”なんだろーが」
会話らしい会話が出来た。
それだけですら嬉しくて堪らない。
きっと、これが片想いでなければ“夫婦”になれたのだろう。
サクラは、眉を下げて笑った。



サスケが出かけ、広い家に一人きりになる。
昼間にゆるりと一人で過ごすのは本当に久しぶりのことだ。
何より、うちはに嫁いでからは初めてのこと。
主婦になったのか、と改めて認識させられる。
どうしたものかなと思いつつ、家中の窓を全部開ける。
普段、寝に帰るだけに使われる家だ。
母屋の地下にはうちはの機密があるとサスケから聞かされている。そのために結界を張っていることもとも。
それでも関係なく窓を開け放った。
風が吹き込み、温かな木漏れ日も差し込んでくる。
穏やかな一日だな、とサクラは伸びをした。







うちはさんのサスケくん 4







そして今日も眠れない夜を迎える。
ベッドの上で寝返りを打ち、カーテンの隙間から覗いた月を仰ぎ見る。
短く切り揃えた髪が頬に被さり、サクラの視界を阻む。
切り傷のような鋭い三日月。
『ありがとう』
月のある日は、サスケが里抜けした秋の夜のことを思い返す。
風が強い満月の夜だった。
(わたしは)
深く瞬きをすると、あの時のサスケの後ろ姿が過ぎる。
少年時代、最後に見たサスケの後ろ姿。
たった独りで里を抜けて、たった独りで戦うことを決めた後ろ姿。
懺悔をするように、深く深く、瞳を閉じる。
(サスケくんに、何かしてあげられていた―――――?)
サクラは考える。
夜を抉るような月が遠くに仰いでいる。
夜の意味を考えた。
世界を閉ざす、夜の意味を考えた。
暗闇はすべてを覆い隠して支配する。
―――――眠れないので、あれば。








2回、扉をノックした。 初めて立つ、サスケの部屋の前。
眠ってしまったのだろうか。
でも、ドアの隙間から淡い光が漏れているのを確認して躊躇する。
この覚悟をどうすればいいのだろう。
「どうした」
後ろから声が掛かって緊張する。
思わず高い声を上げてしまった。
「さ、サスケく・・・っ」
振り向いた先には、風呂上りなのだろう―――上半身裸で首にはタオルを引っ掛けたままのサスケが訝しげに立っていた。
「何か、用があるんじゃないのか」
促されて、目的を思い出す。
肯定しようとして、声が出ないことに気が付いた。
緊張で喉が干上がっているのだ。
俯いたきり動かなくなったサクラを訝しみ、サスケは自室の扉を開いた。
用があるなら入れということだろう。
サクラは一歩、踏み込んだ。
そして、扉を閉める。
パタンと、無機質な音がわざとらしく大きく聞こえた。
完全なる密室。
ここならば、秘めたる想いを告げられるような気がした。
部屋に入って、ガシガシと乱暴に髪の水分をタオルで拭うサスケを見つめる。
きっかけが掴めない。
一度、言葉に出して。
もし、聞き取ってもらえなかったら。
それだけでここまで来た勇気は萎んでしまう。
「サスケくん」
声が出た。
緩慢な動きで、サスケが振り返る。
「サスケくん、の、目的を達成させる、ために・・・」
声が震えてしまった。緊張している。
果たして。
今の言葉はサスケに届いただろうか。
俯いたままで、それを確認することが出来ないことに気付いた。
しかし、サスケが微動だにしないのは分かった。
足元に落とした視線に映る、サスケの影は一向に動こうとしなかった。
やはり。
厭なのだろう。
想ってもない人間と婚姻を結び。
想ってない人間との子孫を残す。
ただ、その“写輪眼”という限界継承のためだけに。
それすら利用して、サスケを独り占めする己の恋心は歪んでいる。
その執着にサスケは知ってか知らずか、それでも彼の黒い瞳からは感情が読み取れない。
それでもサスケが、はっきりと言った。



「憧れと、恋愛は違う」



以前も言われた言葉。
知ってる、とサクラは唇を動かした。
痛いくらいに。
胸を蝕む痛みを耐えるように、声を振り絞る。
「知ってるよ」
ずっと。
長い恋愛をしている。
痛みしか覚えたことのない恋愛をしている。
「知ってる」
そう言って、サクラは自身の夜着の帯に手をかけ、緩めた。
袷が緩み、裸の乳房が露わになる。
夜着の下には何も身に着けていない。
サスケは微動だにしなかった。
無防備で貧相な姿がサスケの目に映っているのかと思うと、脚が萎えそうになる。
一歩近づいたサスケの手が、サクラの裸の首筋を撫で、そのまま不要になった夜着をずり落とした。
サスケの目の前で、全裸を曝す恥辱に震える。
肉付きの薄い小振りな乳房も、くびれのないただ細いだけの腰も、秘処を隠せないほどの薄い恥毛も、全て曝される。
サスケの手が動いて、サクラの左の乳房を乱暴に掴んだ。まるで心臓を鷲掴むような。
サクラはひくりと震えるだけで、拒絶の声は上げなかった。
そんな彼女の様子に、サスケは苛立たしげにサクラを引き寄せると、後方のベッドへ無防備な肢体を押し倒した。サスケの突然の暴挙に思わず声を上げそうになったのを、サスケの掌が口元を覆って塞がれた。
スプリングが二人の重圧に耐え切れずに、きしりと乾いた悲鳴を上げる。
桃色の柔らかな髪が、白いシーツに淫らに散った。
口元を覆われたまま、微動だにせずベッドに沈められる。
驚きに思わず突っぱねそうになる手を握り締めて、耐える。
そのサクラの様子に、サスケの空いている右手が組み敷いたなだらかな曲線を淫らになぞって暴いていく。
彼の手は優しくはなかったが、ただ丁寧に。
彼女の身体を余すところなく触れ。
彼女のあらゆる急所を、サスケの唇が暴いた。








その夜、サスケはサクラを犯した。





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進んだような進んでないような(凹


ブラウザバックプリーズ



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