心地好い手のひらの体温、重み。
息遣い。
時折耳たぶを掠める熱っぽいテノール。
肌を滑る硬質な髪。柔らかな唇。
重ねられる皮膚。
サスケの指先ひとつで、これから致されるすべてを予期してサクラの躰の奥がだらしなく 緩んだ。
脚を開いてサスケの場所を作りながらサクラは喘ぐ。その合間に未だ身に纏っていたサクラの衣服はサスケの手が剥ぎ取られ、裸体で淫らな体勢を取らせられながらも隠さず全てをサスケに捧げた。
露わになった乳房の頂点では乳首が露出し、散々に弄られ紅色に染まって更なる快楽すら得ようと打ち震えている。
花筒はいつの間にか増やされた指に無遠慮に侵略され、花弁の上で剥き出しの真珠も添えられた親指に時折悪戯されるばかりで、サクラは背を逸らせて喘ぐことしかできない。
「ハ・・・ふン・・・ぅ」
舌を淫らに絡ませた後、サクラの唇と自身のそれの間を繋ぐ銀の糸を舐め取りながら、サスケは散々に弄って濡れそぼった花筒からゆっくりと指を外した。
サスケの指を追って、花弁からしとどに愛蜜が零れ落ちて白い内股と敷布を汚したのを臀部にまで伝い落ちる蜜の感覚でサクラは察した。そして、その様をサスケも見ていることも。
―――――サスケは、この躰が“こうなるように”抱いていると云った。
(貶めたかったのかな)
バカな女だと。
(騙し合いって、言った)
唇を重ねる前のサスケの言葉を思い返す。
サクラ自身にもサスケにも欺き続けた想いの丈ですら、真実を濁らせてただ自分が傷つくことを避けるためだけの猶予となった。
それでも―――――これ以上はないと思った。
これ以上好きになっても傷つくのは自分なのだと。
だから塞き止めるしかないのに、逃げることも背けることもできないのであれば。
「サスケくん・・・っ」
サクラが覆いかぶさるサスケの背中に腕を回した。
ハ、とどちらともなく零れた熱い吐息が絡み合う。
間近にせまった漆黒の瞳に、憬れ続けた想いが溢れる。



「好き・・・」



肢体を組み敷いた精悍な身体が明らかに強ばった。
サクラの告白に、サスケが顔を上げる。その眼は訝しげに、何かを見据える様に凝らしている。
「・・・何を」
「―――――わたしは、サスケくんが好きで好きでたまらない」
サスケが里抜けをした夜と同じだ、とサクラは思った。
けれど同じなのだ。
変わらなかった想いなのだ。
「自分に嘘は吐けないから」
嘘は吐けない。
嘘は幼少の頃から下手だった。
だから、嘘は吐かない代わりにサクラは沈黙した。
沈黙すらままならなくなって、サスケの存在を記憶から消したというのに。
「・・・サスケくんを忘れたのに、また好きになっちゃうんだもん・・・どうしたって諦めるしかないよ」
サクラは笑った。
ね、とその翡翠にサスケを映して首を傾げてみせる。
「サスケくんを好きなのは、本当なんだよ」
腕をきつく捕まれ、そのまま強い力で抱き寄せられた。
背中に腕を回され、抱しめられていることが信じられない。
強く抱しめられる力に身じろいで僅かにできた隙間から、サスケの表情を伺おうと見上げると、有無を言わさず唇を奪われた。
きつく吸い上げられ、あっという間に息が上がる。
喘ぐように酸素を求めると、舐るように口腔を辿られた。
舌先を絡められ粘液を擦り付けられる。
―――――識っている。
幾度も繰り返されてきた口付けで、サスケの接吻の仕方、所作を識っている。
口腔を撫でる舌先に唾液を絡めつけると、合わせた唇が僅かに呼吸を飲んだ。
啄む口づけを繰り返しながら、サスケ自身の穂先を濡れた花弁に押し付ける。
僅かに食ませただけで、悦楽に慣らされた花筒は濡れて男根を迎え入れた。
天井に高く響く卑猥な粘着音に、よりサクラの躰は緩んでいく。
「これ以上・・・サスケくんに嫌われる前にサスケくんの前から消えたかったんだよ」
男根の先端だけ含んだ花襞も、きっと淡い恥毛で隠すことなどできない。
すべてをサスケに曝け出していると思うと心が竦む。それでも。
「サスケくんがまたいなくなったら、生きていけないって、そうおも・・・ん・・・っ」
言葉を続けるサクラの片足を無言で肩に担いで、そのまま重心を前に倒して最奥まで自身を埋め込んでいく。
「ウスラトンカチが・・・」
サスケは苦々しく吐き捨てると抱き潰した柔らかな肢体から身を起こし、白い脚を抱えなおした。挿入の角度が変わってサクラが小さく喘ぐのを、唇で拭う。
口腔の端まで嘗め尽くす愛撫に翻弄され、サスケを受け入れたサクラが耐えられずに艶めかしく疼く。絡みつく花襞を味わうべく挿出が深くなり、思わず喘いだ拍子に口付けが解けた。
長く続いた口づけで呼吸は荒い。
面に落ちる影に、真摯な漆黒に気付いた。
「わたしは、全部、言ったよ・・・」
快楽に飲まれそうになる意識の中、絶え絶えにサクラがサスケを見上げる。
「―――――全部、サスケくんなんだよ」
表面張力いっぱいの涙がとうとう決壊して、目尻からとめどなく伝い落ちていく。涙に濡れたサクラの頬に伸ばされたサスケの掌を捕まえて、その指先を唇で触れる。
しゃくりあげたサクラの唇に、口付ける様にサスケの指先が撫ぜた。
サスケが嘯いたものを求めて、熱に浮かされた翡翠は重なった漆黒に乞う。
「・・・―――――」
サスケは言葉を選ぶようにもどかしげに口を開きかけて。
そして。



「―――――抱いてから考える」



再び重ねられた接吻は、ひどく情熱的だった。















「―――謹慎五日明けの気分はどうだ? サクラ」
火影室の中央にあるデスクにゆったりと腰を掛け、茶化すような明るい瞳がサクラを見上げていた。
火影である以前に、サクラの“師”と仰ぐべき人物―――綱手がゆるりと腕を組んでサクラが傍らに参上するのを待ち構えた。
久々の外出でただでさえ視覚が慣れていない上、火影室は照明を灯さないと逆光が目に痛い。
サクラは柳眉を下げて、視線を落とす。
「忍の証を剥奪されるものだと思ってました」
「まぁ、私も殺されかけたからな」
ふふん、と綱手は鼻先で笑う。
サクラは居心地悪そうに頬を引き攣らせることしかできない。
「うちはサスケを復帰させるにあたってリスクを与えるのは必須事項と言われてきた。
本来ならば復帰すら許されず、チャクラを練れないよう呪いをかけて幽閉するべきだという声も少なくはない」
綱手から伝えられる事実に、サクラの心がすくむ。
「里抜けはそれだけ重罪ということだ」
言い切って、綱手は指を組みなおした。柳眉を寄せ、言葉を選んでいる。
「・・・だが、うちはサスケは木の葉が“そう”させちまった・・・一族のクーデターを利用した上層部ですら居たんだ。ダンゾウのようにな」
まるで一人愚痴るように、綱手が忌々しげに吐き捨てる。
綱手は切り替える様に小さく息を吐いて、扉の向こうに声を掛ける。
入れ、という声と同時に扉が開かれ、黒いシルエットの長身が隙のない歩みでサクラに並んだ。
(・・・サスケくん)
遠くはない距離に立つサスケに、サクラの体温が上がる。
先日の逢瀬以来―――あの時も、サクラが目覚めた時にはサスケは部屋を空けていたため、理性が克ちあう際に会うのは本当に久しぶりのことだ。
気まずさと恥ずかしさと、それを貫く罪悪感にサクラはサスケから目を外して俯いた。
「サスケを里の忍として復帰させるにあたって、チャクラに対するリミッターをという声に頷いちまったが・・・躊躇うべきだったんだ」
サスケとサクラと。二人を確認して、綱手は呟いた。
俯いた表情は見えない。だが、きつく結んだ拳からやるせない想いを抱いたのだと思えた。
「あたしもお前たちを図ったところはある。―――――里の狗となるか、火の意思となるか」
申し訳ございません、とサクラは小さく詫びた。
師である綱手が期待する“どちら”にもそぐうことない結論に至らせたのだ。
「―――サクラ。お前は今回の謹慎の理由を把握しているか?」
突然の綱手の問いに、サクラは首を傾げる。
認識している。
改めて確認はしなかったが、“里の命に背いたこと”に違いはない。
「春野サクラは里の命に背き、うちはサスケへ施行すべき呪いを致さなかった―――これが、全容であり、謹慎五日間の理由だ」
小さく声が漏れた。サスケだ。
明らかに躊躇ってみせたサクラに構わず、綱手が続ける。
「間違いではあるまい?」
綱手の勝気な瞳が細められる。
間違ってはいない。だが、正しくもない。頷いていいのか頭を振っていいのか、口をはくはくとさせたサクラに、綱手は構わず続ける。
「ゆえに、うちはサスケの身体は何の呪いも術も受けていないことになっている。早速ではあるが、春野サクラへ任務だ。直ちに“現状維持”に事態を致せ、最優先事項だ」
以上、と言い終えて綱手は椅子の背もたれにどかりと身を委ねた。
「行くぞ」
サスケに促されて、サクラは綱手を振り返る。
サクラと目があって、綱手がそうだと手を叩いた。
「サクラ、これは“信頼の話”だからな。もうサスケを襲うなよ」
襲いませんよ! と速攻で切り返し綱手に背を向け、サスケを押し出すようにして火影室を出た。





重厚な音と共に火影室の扉が閉まり、薄暗い通路に二人きりになる。
何か言わなくちゃ、と唇を開きかけたサクラに構わず、サスケが先を歩き出した。
「サスケくん・・・!」
「任務優先だろ。ここからだと待機室か施術室だな」
サスケは軽く頷いて、歩みを進める。
大股で歩くサスケに後ろから小走りで付いていくしかない。
何より、サクラの任務なのだ。
あまりにも横柄な―――記憶を無くしていた頃は“優しくない”と認識したサスケらしいポーズに早速振り回されているサクラは悔しくなった。
悔しくなったのと、もどかしさを打尽すべくサスケの歩調に合わせて、サクラも並ぶ。
「サスケくん、こないだ、教えてもらってないよ!」
恥ずかしさが手伝って、少しぶっきらぼうな問いかけになった。
そんなサクラを、サスケはちらりと見遣っただけで意味が分からないと息を吐いた。
「・・・こないだ教えてくれるって言って、考えるって言って、あの後教えてくれなかったじゃない」
何を、と直接的な言葉を使わず、少しだけ唇を突き出してサクラがぼやく。
こないだ? とサスケが軽く首を傾げた。
そして思い当ったのか、顎を引く。
「ああ、言ったな」
「何て!?」
淡色の髪を跳ねさせてサクラがサスケに完全に追いつき、向き合う。
頬を紅潮させて必死な表情をさせたサクラに、サスケは僅かに口角を下げて視線を逸らした。
「―――――言ったけど、お前が意識飛ばしてたんだろ」
「ええぇ・・・」
完全に動きを停止させたサクラをサスケは緩慢な動きで避けて、相変わらず大股ながらも今度はゆっくりとした歩調で進む。
サクラは肩を落としながら、それでもサスケに倣う。
やがてサスケが立ち止ったのは、先日までサスケが療養と称して軟禁されていた待機室だ。
骨ばった手がドアノブを引いて、シャープな顎先をしゃくって促した。
スマートではないエスコートではあるが、サクラが一歩踏み込む。
相変わらず肩を落としているサクラの首筋に、熱い指先が触れた。
辛うじて鋸っていた赤い痕跡を撫でたことにサクラは気付かない。その体温の意味も。
突然のサスケの接触に、首を傾げたサクラに漆黒の目を細めて。
二人を置いて、扉が閉まった。





ありがとうございました!







ブラウザバックプリーズ





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