額に当たるゆるやかな呼吸で目が覚める。
「ん・・・」
ぼんやりとした意識のまま身体を動かそうとして、ひたりとくっついた肌に身を強張らせた。
頬に当たる筋肉質な肌の感触や、乳房を押し潰す硬い肌質、素足も無防備に絡んでサクラの恥辱を煽って一気に覚醒へと導いた。
わずかに身を揺すると、感情の読めない漆黒の瞳がじっと見下ろしていた。
「ごめんなさいっ、わたし、寝ちゃって・・・!」
重たい下腹部を庇いながら身を起こす。
薄闇ではあったけれど自分が裸であることを気にして、先ほどまで被っていた掛け布団を引っつかんで胸元に引き上げたが、逆にサスケの素肌が露わになって慌てて背を向けた。
「あの・・・ごめん・・・なさい・・・っ」
サスケに寄りかかってしまっていたことや、肌を曝してしまったことや、ともかく居た堪れない。
それでも。
「・・・わたし、誰でも良いわけじゃないよ」
いつかサスケに言われた嫌味を思い返して付け足すように言ってのける。
言ったところで、だからなんだと思ったが、後の祭りだ。
居た堪れなくなってツイと顔を逸らすと、背後から噴出して、続いて低い笑い声が聞こえた。





やはり、うちはサスケに関する記憶は蘇ることはなかったけれど。











ぱらり、ぱらり。





3日が経ち、サスケは対毒の免疫を発揮させて徐々に回復していった。
それでも変わらずサスケは火影塔の一室の待機室に“療養”を称して軟禁状態にある。
あれ以来、サクラもサスケに会っていないため、あくまで火影から受けた伝達によって知った情報ではあるのだが。
サクラは書簡庫に篭り、自身のチャクラの記憶を元に今まで触れたことのある文献を片端から読み上げている。
不意に掠める“何か”があるものの、それが確固たる何に繋がるかというわけでもなく、もちろんサクラのサスケに関する記憶は増えることはなく。
ぱらり。
自身のチャクラを追いかけて、今まで読んだ記憶がある書物を片端から手にとっていく。
読んだ記憶はある。
知識として認識している。
だが今のサクラにとって一部の知識を損失している為にその技術がなく、術式を組み立てられる可能性を見出せない―――――果たして、何の目的で彼を幾何もの呪印で拘束しているのか。
ふと、書簡を手にしていた手首に視線が止まる。
先日の逢瀬の際に、手首の内側を痛いほどに吸われ歯すら立てられた皮膚は傷つき変色を遂げていたが、治癒する気が起らずそのままにしていたのだが、三日経ってようやく随分と薄まった。
安心すると同時に、身体のあらゆる箇所に落とされた口づけを思い出して、頬が熱くなると同時に躰の奥底が緩む感覚を覚えて頭を振って雑念を追い払う。
(なんで彼のことばかり考えてるの)
自問自答して、脳裏に何かが掠める。
(―――――違う)
違う、と知らず唇もなぞる。
サクラから離れられなくなるように―――――。
先日のことだったのかいつのことだったのか、サクラに触れた手のひらの体温、その重みがリフレインする。
サスケの手管はいつだって甘美で、魅惑的だった。
(―――――そうだ、これ以上)





火影の命に倣ってサスケの元に訪れた日―――。
久しぶりに立ち入ったうちは邸には厳重な結界が張ってあり、謹慎と言いながらも軟禁状態にあると言えた。
そんな中でもサスケは表情一つ変えず、漆黒の瞳には影が落ちたままだった。
「一気に大量のチャクラを練れないようにして、定期的にチャクラの潤滑を行う必要がある枷を附けることになったの」
火影が発信した書簡をゆっくりと捲り、通されたリビングのテーブルに広げて対面したサスケに見せる。
「・・・サスケ君が、木の葉の里で忍として復帰するための条件として」
それを施すことで、この軟禁生活からも解放されることが明記されているのだと。
そうか、と頷いたサスケにサクラは書簡をテーブルに叩き付けて立ち上がる。
「――――だって! サスケくんはもう木の葉を裏切らないのに、こんな・・・!」
「だからお前は甘いんだよ」
クツ、と喉奥で嘲笑う。
「忍は騙し合いだって、今更だろ・・・?」
サスケのその一言にサクラは一度瞬きをした。
そして決意する。一時でもサスケを翻弄してやろうと。
「―――――誘ってみろよ」
そのサスケの挑発に、サクラは妖艶に微笑み幻術を用いた。
理由は簡単で―――サスケがサクラ自身を欲情するとは思わなかったのと―――行為の“スキル”のないサクラでも相手にできるよう脳直接に娼婦を描かせたほうがサスケの相手になるだろうと、“男”にとって魅惑的な遊女を魅せた。
サスケに幻術が敵うとは思わなかったが、幾層にも幻術を施してサスケの理性を済し崩すことに専念した結果、サスケの理性は簡単に崩れて無心にサクラの躰を貪った。
その手管は荒々しくも執拗で―――ひどく甘美だった。
サスケも一人の男だったのだと、その時のサクラはほくそ笑んだ。胸奥に蟠る疼痛をひた隠しながらも。
サクラにとって。
サスケが少しでも己に執着すればいいと。
魅惑的な幻術を用いて、自分以外のチャクラも身体も受け付けなくさせて。
サスケが一度は里を捨ててからの数年サクラが抱き続けた憧憬を、ほんの少しでもサクラに抱けばいいという意趣返しのつもりだったのだ。
もしくは、ほんの小さなひっかき傷をサスケに負わせることができればと。
それだというのに、その後もチャクラ維持を理由に逢瀬が重なるたびにサスケに触れられる悦びを覚えて、サスケをサクラから離れられなくするつもりが、結局サクラがサスケを放せなくなるだけだった。
ただでさえ執着した想いが繰り返された性行為で躰が悦楽を覚え、よりサスケ以外に欲しくないほどに。
(そう、わたしは“あの日”)
執着を自覚して、術式を解いてサスケとの繋がりを絶とうと。
目が覚めたら、サスケの術式を解こうと。
だから目が覚めるまではせめてサクラの呪印――――所有の証を刻んでおこうと。これ以上、離れられなくなる前にと。
(―――――ああ、そうだ)
目が、覚めた。








「サスケくん」
ノックに返事はなかった。入るよ、とサスケがここ数日利用している待機室の扉を開く。
日が暮れかけた待機室はひどく影を深くして、その中で寝台に仰向けに寝そべるサスケを確認した。
目を瞑るだけで起きているのはわかる。サスケに馬乗りになり、面を上げた白い頬に手を添える。漆黒の瞳はゆっくりと開いて再び瞼を落とす。
サクラがわずかに身を屈めるだけで唇が重なり、当然のようにそれは深くなった。
細い腰を抱き寄せたサスケの掌が、悪戯にサクラの服の裾を潜って裸の皮膚をたどる。
サクラはわずかに身を引きかけたが、首を傾げて口づけの角度を変えた。
「ふ・・・っ」
食むように唇を重ねると、どちらからともなく舌先で唾液を絡め合わせ口づけを繰り返した。息継ぎが苦しく、わずかに漏らす吐息すら飲み込まれる。
もがきながらも纏わるようにサスケの背に手を這わせようとしたサクラの手首は、寸でのところで捕えられた。
「―――――何をする」
「・・・術式を、解くの」
とても寸前まで口づけを施していたとは思えないほど、単調な声質が響く。見据えてくる漆黒に耐えられずに、サクラは思わず顎を下げた。
わずかに肌蹴たサスケの装束から左胸に刻まれた術式が見える。
「サクラ」
「もう必要のないものだから」
「・・・男を識って、おれだけじゃ不満になったか?」
クク、とサスケが哂う。
面を下げているから表情こそわからないが、笑われて当然だ。卑下されて当然のことをしている。
「―――そうだよ」
だから、と続けた唇はサスケに塞がれた。そのまま手首を引かれて寝台へ引き倒される。
頭上で手首を一纏めにされ、上から覆いかぶされてしまうと不安定な寝台の上では抵抗もかなわない。
「わたしはサスケくんをちょっと困らせたかっただけ。火影様の命を破ったことで罪が科せられるだろうし、サスケくんのチャクラのリミッターは、今度こそきちんとした他の医療忍者がしてくれるから」
わずかに唇が外され、吐息がかかるほどの距離でサクラは口早に告げる。
「だから、放して・・・」
お願い、と声は掠れた。
いつの間にか溢れた涙は目尻から零れ落ちていく。
泣くのは卑怯だ、と目を瞑ると目尻に柔らかなものが押し付けられた。
「断る」
「なんでっ!」
「この呪印を見る度、俺に負い目を抱き続けろ」
「なに、そんな・・・」
テノールが甘美にサクラを惑わせる。言葉の合間も薄い唇はサクラの皮膚に触れたがった。
それを嫌って身をゆすろうとすると、拘束していない方のサスケの手が組み敷いたサクラを抱き寄せ、気付けばサスケの身体の分だけ開脚させられもう逃れられない。
「申し訳ない、申し訳ないって俺のことを考え続けながら生きろ」
「いやだ・・・! わたし、もうサスケくんのこと想いたくない、考えたくない!」
顔を背けてなぞる唇から逃れようともがく。
「随分勝手だな」
「そうだよ・・・! わたしが勝手にサスケくんを拘束して、わたしの勝手でサスケくんを捨てるの」
言い終わるや否や耳たぶに唇を落とされ首筋までを舌先でなぞられて、ただそれだけで。
「んあァ・・・っ!」
ビクビクと背筋を弾けさせるも、頭上で拘束された腕と、サスケの身体に抱きつぶされていては快楽に身を委ねることもできない。
たったそれだけの接触で息を弾ませ、悦楽を求めて身体に熱を篭らせる。
「こんなに俺に抱き慣らされた躰で、何言ってんだ」
「サスケくんは抱けるなら誰だっていいんでしょ・・・! もう、放して・・・」
言って惨めな気持ちがサクラに纏わる。何より強く拒絶できない自分の弱さを思い知る。
気付けば上着を下着ごと押し上げられて乳房が無防備にまろび出ていた。その頂をサスケの赤い舌先がちろりと突く。
それだけの接触で股間が緩んで、もう膝を立てていることすらできない。
「・・・っ」
しゃくりあげたサクラを余所に、サスケの空いた手がサクラの下着を潜って骨ばった指先は迷わず花びらを撫でて花筒をなぞった。花蜜がサスケの指を受け入れて、花襞はいやらしく蠢いてサスケを奥へと誘う。
隆起した乳首に軽く歯を立てられ、触れてほしくないトコロを容赦なくなぞられもう何も考えられない。
「処女だったお前をこういう風になるように抱いてるんだ」
言っただろう、と告げたサスケの吐息は熱い。
「忍は騙し合いだって」
どういうこと、と言葉をなぞったサクラの唇はサスケの唇によって。








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