「フツーね」
ものすごくつまらなさそうに感想を述べたイノに、サクラは眉を下げた。











「寝室も別、室内での衣装もいつも通り、エプロンもしゃれっ気なし、そんなんじゃ下着だってフツーなんでしょ?!」
イノの勢いに押されて無言で頷くしかない。
全く持ってそのとおりなのだから。
サクラがうちはに嫁いで数ヶ月が経っていた。
木の葉の上層部による策略とはいえ、敷地に張られた結界の中で暗部に監視された生活を繰り返し、敷地に出入りする人間も酷く限られた人数だった。
そんな中、火影の遣いと称して山中イノが訪問し、冒頭の科白である。
「アンタは確かに顔は可愛いけど! 武器に出来るものは全て使わなきゃ立派な“くの一”とは言えないわよ」
イノはサスケとサクラが恋愛成就により結婚に至ったと思っている。
イノだけでなく、木の葉の一部の上層部以外は全員、そう思っているだろう。
サクラ自身、サスケに今の想いを伝えたのは今朝方の話だ。
その想いにサスケの唇は弧を描いて肯いてくれた―――――と、思うのだが。そのままサスケはナルトと任務へ赴いて侭ならない会話もしなかったがために、今更ながらあの遣り取りを自分は美化しているのではないかと、サクラはこの半日ですでに自信をなくしていた。
項垂れるサクラに構わず、イノは部屋を見回して殺風景、と感想を述べる。元々がサスケしかいないうちは邸だったところにサクラにも部屋を別に設けられたのだから、これ以上家具を増やす必要もなく、サスケのテリトリーにサクラの私物を置くのは憚られたのだ。
それでも昨晩や今朝のサスケとの限りなく微糖とも言える遣り取りを肯定すべく、サクラは面を上げる。
「でも! ちゃんと新婚さんらしいことだって・・・」
「例えば?」
間髪入れずにイノに問われ、例えがすぐに出てこない。
たとえば、とイノの言葉を反芻して今朝、勢いづけて決行したばかりのことを思い返した。
「・・・いってらっしゃいの、き、キス、とか・・・?」
唇を尖らせて言いごもるサクラは頬はもちろん、首筋から耳たぶまでもを真っ赤に染めて耐えられないとばかりにそっぽを向いた。
「へぇ! アンタもやるもんね!」
感嘆の声を上げたイノに、ほう、と背後から異なるテノールが被さった。



「“アレ”は恒例行事になるのか」



了解した、と肯いて、いつの間にか帰宅していたサスケは、いつも通り装備を解くべくリビングを通り抜けて自室へ消えていった。
おかえりなさい、お邪魔してます! と黒装束の背中へ向けて慌てて声を掛けるイノだったが、思い当たったように硬直したサクラに向き直った。
「おかえりなさいのキスもするんじゃないの?」
イノの尤もな詰問に、それは無理と力なく桜色の頭を振った。








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