気が付けば陽が傾いていた。
手にしていた書簡が暗さで読み取るのが困難であることに気付いて顔を上げる。
春野サクラは手元に幾つか重ねた書簡を手に席を立った。
書簡庫はサクラ以外の他に誰もいないのか、陽が暮れ始めたというのに照明が点いていない。書簡を戻すだけのことに点灯する必要はないと、自身の触れたチャクラの痕跡を追って元の場所へ本を戻していく。
それでも気配を察して、それを追った。
(・・・サスケくん)
夕闇の中でも見間違うはずはない。うちはの家紋を背負った長身が、薄紫の闇を逆光であろうとも。
サクラは咄嗟にすぐ側の本棚に隠れた。長い片恋が続いて、影から見守るのがクセとなってしまっている。
決して両想いになったとは思ってはいないが、隠れるほど想いをひた隠す必要は今となってはないというのに咄嗟にとってしまった行動を思い直し、改めて隠れた本棚からひょこりと顔を上げた。
(―――あれ?)
訝しがられただろうか。
一寸目を離しただけで姿を見失った。
(でもサスケくんの、気配がまだ)
振り返ろうとした瞬間、腕を引かれて背後の本棚に背を押し付けられる。咄嗟に身を捻ろうとしたところで、股間に脚を押し付けられ、胸部に腕を押し付けられ動きを封じられた。
突如の暴挙に見上げたサクラに、漆黒の瞳を細めて謀略者―――うちはサスケはその薄い唇にアルカイックを乗せた。
「お前、隙だらけ」
「だって、それは、サスケくんだって・・・」
わかったからで。
そう続けようとしたサクラに影が落ちて、近づく気配に咄嗟に眼を瞑る。
「――――ったッ」
額をピシリと指で弾かれた。
「だから言ってるだろ、隙だらけだって」
サスケは今度こそ確実に口端を上げてからサクラを解放し、ゆっくりと背を向けた。
その不敵に翻ったうちはの家紋に、悔しさと恥辱心が込み上げてくる。
「―――――サスケくんだって!」
思いのほか大きい声を上げてしまったことに自身で驚きつつ、歩みを止めたうちはの家紋に大股で追いつく。
くい、と軽く引いただけで、サクラより頭一個分の長身は簡単に身を屈めた。
漆黒の瞳に映った翡翠の瞳が見返してくる。
だから。
サクラは僅かにかかとを上げて、薄い唇に己のそれを重ねた。たった触れるだけのそれでも、不覚にも震えた。



「・・・サスケくんだって、スキだらけだよ」



そう言ったのが精一杯で。
すぐさまサクラの意識は唇に当たる歯の感触や目の下に当たる熱い吐息、腰に回された腕のきつさや、聴覚を犯す水音に全てを支配されたのだけれど。






ブラウザバックプリーズ


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最後のところをナルトに目撃されました。








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