青い空。

白い雲。

強烈な日差しが黄色と黒と桃色の頭部を直撃して、アイスクリームの様にとろけそうなほど暑い。

太陽も直角に上って影は三人の足元に溜まるだけとなり、暑いという形容だけが彼らの思

考を埋め尽くす中、唯一じりじりと蝉の鳴き声だけが耳障りだった。

「来ねぇ・・・」

「来ない・・・」

「いつものことだろ」

三人の大きな溜め息が入道雲をより一層大きくした。











じりじりじりと蝉の鳴き声が纏わりつく。

額宛に沿って汗がひっとりとくっついた。

中忍試験の際に不本意ながらも髪を切ってよかったかもしれないとサクラは独りごちる。

ともかく、今年の夏は暑い。至極暑い。

今更ではあるが、担当教官であるはたけカカシが時間通りに来ないのはデフォルトである。

だがしかし、この真夏こそ時間は守らなくともほんの少しだけでも早く来るなどの誠意は

見せて欲しいと春野サクラは唇を尖らせた。

軽い謝罪と、遅刻の理由は述べるもののまったくもって真摯な態度ではないがゆえに、

サクラにとってカカシのランクは下がる一方である。

ゆるく長く溜め息を吐く。そうすることで体内に溜まった熱が僅かでも発散されるのでは

ないかと思えるからだ。

と、首筋に冷たく固い感触が当たり、背を仰け反らせてその場から立ち退いた。

「何・・・っ?!」

ニシシ、とナルトが水滴を纏わせたボトルをかざしてきた。

どうやらサクラの首筋に宛がったのはそのボトルのようだ。

セミの鳴き声だけが世界を凌駕し、それでも僅かに静けさを帯びていたのはナルトが不在

だったからだろう。

ボトルは近くの販売機で購入したのだろう。冷えているのか、灼熱の外気温度に耐えきれ

ず丸みを帯びた表面に結露を肥していた。

「何すんのよっ!」

腕を振り上げるものの、暑さで追う元気はない。

殴られに来てくれないものか、とちらりとナルトを見遣るとゴツゴツと喉を鳴らしながら

水分補給に徹していた。

満足したのかボトルから唇を外して、爽快感溢れる声を上げた。

栄養補給ドリンクのCMみたいなどとぼんやり考えていたサクラにボトルが向けられる。

「サクラちゃんもどーよ?」

魅惑的な勧誘にコクリと喉が鳴ったのは生理現象だ。

『パブロフの犬』。

それと同時に掠めたのは『間接キス』。

ナルトは何も考えていないのだ。

考えているのはきっと自分だけ。

暑さで頭も朦朧としてきた。

いただくわ、と頷いて手を伸ばした先で、ナルトが持つボトルが横取りされた。白い手に

よって。

「サスケくん」

サクラが白い手の主の名を呼ぶと同時に、ボトルを薄い唇につけて勢いよく傾けた。

一気に飲みきり、景気よくゲフと一度大きなゲップを漏らしたサスケにすらかっこいいと

サクラはうっとりする。 「あー! サスケェ! せっかくサクラちゃんにあげようとしたのに・・・!」

「うるせぇ」

ぎゃいぎゃいと騒ぎ立てる二人の横で、サクラは力果てる様にその場にしゃがみ込んだ。

不意に影が覆いかぶさり、僅かの涼みでサクラの思考が戻ってくる。





「サスケもまだまだお子様ねぇ」





頭上からの声に思わず顔を上げた。

何時の間にか現れた銀髪の男に少々動揺しながらも、何がというサクラの問いかけは、

金髪と黒髪の少年らが畳み掛ける本日分の遅刻への不平不満によって滅却されるのだった。
















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