ビュウ、と一陣の風が疲弊した身体を煽った。
任務と称した訓練を受け、火影塔の前でカカシとは別れた。先ほどまで空が橙に染まりかけていたはずだが、いつの間にかとっぷりと太陽は西へ沈んでいる。
身体を動かしていた任務中には温暖の差を感じなかったが、季節の変わり目とはいえ、日が陰ってから気温が下がると同時に北風が強まったのだ。
寒い寒い! と騒ぎ立てるナルトと共に、悲壮な声を上げたのはサクラだ。
なんだ、とサスケが振り返ると何でもないと短い薄紅色はふるふると頭を振った。
「・・・髪が短いのって、首元冷えるのね」
サクラは短く切りそろえられた襟足を気にしながら、肩を震わせた。防寒に備えて外套を羽織ってはいるものの、首元のことは気にしていなかったようだ。
今までロングヘアだったことを思うと、より寒さが堪えるのかもしれない。
すでにサクラは何でもないように背筋を伸ばしてはいるが、外套からはみ出している手のひらをぎゅうと強く握りこんでカタカタと震わせている。
それでもやはり寒いことに変わりなく、風が吹くたびにサクラは身を強張らせるばかりだ。
強がっているのは朗かだというのに、サクラはサスケに弱みを見せないようにする。
(―――ウゼェ)
サスケは盛大に眉をしかめ、思わず出そうになる舌打ちを噛み殺した。
(何だっていうんだ)
そもそも何故にサクラのリアクションひとつで苛々しなくてはならないのも理解に苦しむ。
そんなサスケを余所に、背後ではサクラに纏わるナルトの声が聞こえてきた。
きゃっきゃと声高に戯れる二人の遣り取りは、ひどく耳に障った。
否―――耳障りという対象ではなく、自分がいるのに構わずナルトとサクラでテンションフルバーストであることに、だ。
やがて笑い声まで弾けだし、すでにナルトはサクラから寒さという杞憂を拭い去ったようで。
きっとサスケの背後で、ナルトもサクラも互いの笑顔を合わせているのだろう。きっと。
苛々が募る。
(ウゼエ・・・)
よろよろと戯れながら帰路に着くナルトとサクラを先導していたサスケの歩みが緩む。
やがて止まりかけたサスケの背中に、ボスンと柔らかな衝撃が走った。
「わっ、あ、ごめん、サスケくん・・・」
前途不注意すぎるだろうと眉間を寄せるサスケが振り返るのを見て、サクラが申し訳なさそうに眉を下げた。
身長差もあまりないことからか、顔が近い。目があった瞬間、見返した翡翠はあからさまに視線を下げた。
顔を逸らされたのは、きっとそれが理由だ。そう、サスケは思い込むことにした。
サクラの傍らでナルトはぴったりとくっ付いていた。ナルトも寒かったようで、ひたりとくっ付いたサクラの腕から暖を取っているようにも思える。
サスケは目を眇めると、一歩後退してサクラを挟むようにしてナルトが立つ反対側に寄り添った。
翡翠と群青の二対の瞳が見上げてくるのを察する。





「・・・風除けだ」





ボソリと告げた言葉は明らかに言い逃れでしかない。
云うんじゃなかったと瞬時にサスケは後悔したが、右腕に柔らかな感触が絡められる。
サクラの腕だ、と認識した直後にぐんと引き寄せられ、腕に当たるのはささやかながらも主張する乳房の柔らかさだ。
「んな、サク・・・―――ッ」
その感触にギシリと身体を強張らせ、乱暴にすることもできずに振り返ると、サスケの腕だけでなく反対側の腕はナルトの腕を抱き寄せるのを目の当たりにして、サスケは頬を引き攣らせた。
よほど寒さに耐えていたのか、サクラは細かく震えながらも二人の腕をしっかりと抱きこんでいる。
「てめぇ離れろナルト!」
「なんでオレなんだってばよ?!」
サスケはサクラに捕捉されていない空いた手でナルトの額宛ごと頭部を掴み、柔らかな肢体にくっ付いた身体を引きはがそうと力を込める。
突如のサスケの暴挙にナルトも黙ってはいない。
「んだコラ・・・!」
「ヤロォ・・・」
「ねえ・・・ちょっと・・・二人とも・・・っ」
同じ体躯にも関わらず、二人の身体に挟まれ息苦しさにサクラが身を放そうとするが、いつの間にかぎゅうぎゅうに押し込められてサクラを無視してナルトとサスケの言い合いは続く。








サクラが激昂するまで、あと3秒。












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