舞い落ちる





ひらり、ひらり。





ああ、なんて。
ついていない。
奈良シカマルは大木に背を預け、自分の不運を呪った。
まさに、不運。
あの二人―――エリート忍者の少年と幻術使いの少女に気付かれず、どのように退去すべきか考案せねばならない。
過ぎるのを待つ。それだけだ。
めんどくせぇ、とシカマルはげんなりと溜息を吐いた。
―――――中忍試験の打ち合わせやなんやで慌しい睦月だった。
今は選考後の処理ではたまた忙しい。忙しいことは好きではない。むしろ大嫌いだ。
きっと性に合わないのだ。仕方がない。
だから、砂の使いが来るまではと、大きな椎の木の枝に身を潜めていた。
(俺が先に来てたってのに)
どうでもいい順番を年頭に於いて、さっさと立ち去ってくれることを祈るばかりだ。
椎の木の下には―――うちはサスケと、春野サクラが。
少女の声が聞こえた。
サスケ相手だと、緊張するのか少し高めの声になる。
いつからか、彼女の恋心に明らかになった時にシカマルですら気づいたサクラのクセだった。
だから、低く、言葉の少ない彼よりも遥かに聞きやすく、まるで彼女の独り言のようにすら聞こえてしまう。
遣り取りは聞こえなかった。
意識を逸らして空に浮かぶ雲に集中したからだ。
春野サクラとは―――遠い親戚ということと、家が近所ということで家族間での交流はあった。
ちびで。
幼少の頃は泣いてばかりいた、痩せっぽっちだった少女が。
端正な顔作りだとか。
淡い髪の色だとか。
翡翠の瞳の色だとか。
面積の広めの額だとか。
幼いながらに、異端なる存在は排除されるものなのだということを認識した。
だからと言って、手を差し伸べられるほど人間的に成長もしておらず、見て見ぬ振りをしてしまったのが、未だに悔やまれる。
そんな時に手を差し伸べたイノや、突如彼女の目の前に顕れたサスケにサクラの心は攫われた。
いつしか己と彼女との関わりも少なくなり、会話もなくなり、アカデミーを卒業してからは会う機会すらなくなった。
同じ班に配属されたイノから話―――大方が張り合うばかりの話だが―――を聞くばかりになり。
ふと。
不自然に彼女の声が途切れる。
そして続く、熱い息遣い。
しかし、まさか。
まさか、あのサスケとあのサクラが隠れて逢瀬を重ねているだなんて、自分の認識範疇を飛び越えている。
無理やりに顔を背け、事実から逃れる。
空気で分かる、濃厚な口付け。
時折零れる彼女の吐息に、きつく眼を瞑る。
こんな彼女は、知らない。
知ってはいけない。
シカマルは息を詰めて顔を背ける。
この場に居続けるのは得策ではないと、木の枝から身を翻した。





ひらり、ひらり。





「ど、どうしたの、サスケくん・・・?」
唇を外したサスケに、サクラは困惑の眼差しを上げた。
普段、外で接触をするような人ではないから。
足元に舞い落ちた一枚の緑に、サスケは口角を上げる。
「下手くそ」
「え?!」
今更、口付けの得手不得手を指摘されるとは思わず、サクラは途惑う。
サクラの困惑に気付いたサスケは、サクラの白い細顎を取って舌を突き出して再び口付けた。
やがて積極的に絡み始めたサクラの柔らかな舌先に、サスケは先ほどの独り愚痴が幸を成したことを知る由もない。





--------------------



春野家と奈良家の家紋が両者丸型と類似してたので、勝手に親戚設定。





ブラウザバックプリーズ






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送