「アンタ、その後先考えないで我武者羅に突っ走るの、そろそろやめなさいよ」
よくぞここまで、と言えるほどだ。
サクラは嘆息して、治療してくれとやってきたナルトを簡易ベッドへ誘った。
先の任務で負傷したナルトの状態を一通り確認し、特に大きな怪我となった右肩と右肘に手のひらを当てる。
以前、螺旋手裏剣が完成しきる前に無茶をした時の負傷とは違うが、やはり、酷い。
「サクラちゃんが治してくれるって思ったら、全力で頑張れるんだってばよ!」
ニシシ、と笑って見せる。幼少の頃から変わらないそれ。
本来のチャクラの影響で怪我に対する耐性などは人一倍優れているものの、それを前提に戦闘を行うために人一倍無茶をするし、怪我の度合いも深いのだ。
右肩から肘にかけての治療を済ませ、あとは自然治癒に委ねようと手を引いた。
と、同時に、ナルトの右手がサクラの腕を引いて突然のことにサクラの身体はあっけなくナルトへと倒れ込んだ。
「きゃ・・・ちょ、危ないじゃない!」
「サクラちゃん、忍ならどこででも気を抜いたらダメだ」
そんなこと、とサクラが言い募ろうとするより先に、ナルトの腕がサクラの腰を抱き寄せて、ナルトが横になっている簡易ベッドに引き上げられた。
そして近くなる二つの群青と翡翠。
「オレさ、サクラちゃんずっと好きで、きっと力ずくでサクラちゃんをどうにかすることだって、今はできるけど」
サクラの腰を抱くナルトの手のひらが熱い。
こんな触れ方をされたことがないから、恥ずかしさと、未知の恐怖感すら。
居た堪れなくなって、何も言えないでいるサクラにナルトは眉を切なげに寄せたのに、小さく笑った。
いつからこんな笑い方をするようになったのか。サクラは知らない人だ、と心を震わせた。
「サクラちゃんに嫌われたくないから」
するりとサクラに触れていたナルトの手のひらが退く。
それでも、サクラを射抜いた群青の双眼は魅了して止まない。
ナルトの雄の表情だ。
「サクラちゃんに嫌われたくないっていうそれだけで、抑えてる」
一度、サクラから引いた手を握りしめる。
きつく。
「今だって、そう」
そういって、握りしめていた手のひらを再びサクラに伸ばした。
サクラの剥き出しの二の腕触れる。
ナルトの手のひらは、怪我のためか熱が高い。
「・・・ばか」
声が掠れた。
語尾が小さく震えたのを知られたくなくて、唇をきつく結ぶ。
パ、とナルトは腕を放した。ナルトが触れていた箇所が熱い。
「〜〜〜ごめん! 困らせたかったわけじゃなくて!」
ああだこうだと言い訳を募ろうとするナルトに、サクラは言葉を飲み込むように息を吸って、飲み込んだ。





―――――もしも振り返ったら。
サクラは、思う。
もし、ナルトの想いにサクラが応えたとしたら―――応えたとしても、ナルトは信じないだろうが、ナルトはサクラを自分のものにしてくれるのだろうか。
今はいない黒髪の彼が未だサクラの胸奥を過ぎるけれども、日々煌めくようにサクラを魅了する目の前の存在に惹かれているのは事実で、目を背けるにはすでに遅い。
(・・・馬鹿げてる)
渦巻く欲望がサクラを乱す。
利己。
自分勝手。
わがまま。
サクラが振り返ったところでナルトの想いの丈がそこで止まるのが怖いのだと。
(想い続けていてほしいだなんて)
己の奥底に封じてあるそれを、決して浮上させないように。むしろ永遠の枷として、眠らせる。
(ホントに、サイテー・・・)
サクラは細く、長く、息を吐き出して胸奥に燻る熱を放出させた。
それを溜め息と察したのだろうか。
ナルトがわずかに傾いて、サクラに寄り添った。
薄い肩に顎を乗せて、そして白い耳たぶに告げる。
「ほんの少しでいいから」
まるで、贖罪のように。
幼少の頃の迫害からか、ヒトが一般的に抱く感情に不慣れなナルトだからこそ、恋することを罪に想う必要などないのに、そんな想いをさせているのが当人のサクラなのだ。
「オレのこと、好きになって」
告げられる言葉に、枷を附けたはずの想いが浮上しそうになる。舞い上がる気持ちに身を委ねたくなる。
サクラからナルトに伸ばした指が、優しく少し硬質な金髪を梳いた。
ばかね、と首を振って笑ったサクラに、ナルトは唇を尖らせた。
幾度も続けるサクラのその所作に、ナルトは心地よく目を細めただけだったけれど。











―――――もう、好きなのに。








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