―――――何が変わると、期待していたわけではなかったけれど。











「3回目」
え、と瞬くと、イノが得意気に眉を上げた。
「溜息なんて吐いてどうしたの」
サクラは自身が溜息を吐いていたことにすら気づかず、目を眇めた。
「サスケくんのお誕生日をみんなで祝おうっていうのに・・・そんなに独り占めしたい?」
ニヤニヤといやらしい眼差しで見上げてくるイノに、頬を膨らませて反論を試みる。
イノはテーブル越しに相対して座っていることに距離を感じたのか、椅子を前に進めてサクラに近づいてきた。
そんなことないよ、と続けて告げるサクラに、イノは頬杖を突いて訝しげに首を傾げる。
「それにしても遅いわね・・・サスケくん、今日当直って言ってなかったっけ。ちょっとナルト! 確かなんでしょうね?!」
「え?! オレ?! キバが聞いたんじゃねーの?」
「オレ知らねぇよ! シカマルじゃねぇの?」
キバの更なる切り返しにシカマルは気だるそうに頭を傾げた。
盛大に舌打ちをしたイノをサクラは笑って、そしてまた溜め息。
しまった、と本当に何でもないと頭を振ると、イノが不機嫌に眉間を寄せた。
「アンタその不景気な面構えでサスケくんの誕生日祝うつもりじゃないでしょうね?!」
「不景気とはなによー!」
テーブル越しにギャアギャアとイノと言い合いをしながら、隠せないなぁと自分の不器用さを恨みながら、それでも言えないとサクラはイノに溜め息の源を告げなかった。
アタシに嘘吐いてたら許さないんだからね! と拳を作ったイノに負けじと、サクラも拳を突き出した。
―――――嘘は吐いていない。
―――――黙っているだけだ。
そう、サクラは独白する。



――――― 一度だけ、サスケを受け入れた。



(きっと、変だったんだ、何か)
求められることに応えたくて身体を開いた。最初で最後の機会かもしれないと、後先考えずに肯いた。
流れ、と言われたらそれまでの性行為だった。
薄暗い中で迫る躰に纏わることしかできなくて、サクラにとって総てがサスケが初めてで従順に倣うことしかできなかった自分を呪う。
けれども、きっと、踏み込んではいけない領域だったのだ。
その事実として、今まで以上に何の変哲のない毎日が積み重なる。
もしくは、あの歪な一刻が何もなかったように。
(どうしたら、いいんだろう)
何も変わらないことに絶望すら抱いていた。
全てのことが虚ろに見える。気がつくと俯いている自分が嫌だった。





いつも通り人気の感じられない家の様子を窺いながら、うちは邸の呼び鈴を押す。
やはりいつも通り返答はなく、玄関扉に手を掛けると錠が掛かっていない扉はカラカラと音を立てて開いた。
「サスケくん・・・? お邪魔するよ・・・?」
火影塔の控室でサスケを待ち続けた結果、本日朝方で帰宅したということを知り同僚でサスケの誕生日を祝おうという流れは飲み屋で待つことになった。
主役であるサスケをみんなで待つ店へ連れてくる役目をサクラが引き受けたわけだが―――ナルトに譲ろうとしたのをイノがしきりに訝しがり、頷かざるを得なかったのだ。
「何だ」
廊下の奥から控えめの声が届き、家の主であることを知る。
「サスケくん、今日、お誕生日だから! みんなでお祝いしようって・・・」
奥に向かって声を張るサクラの声が途中で途切れる。
腰に布を巻いただけで、漆黒の毛先から水を滴らせながらサスケが出てきた。
「風呂入ってた。洋間で待ってろ」
それだけ言い置いて、サスケは板間の廊下に水滴を滴らせながらペタペタと自室の方へ歩いて行ってしまう。
「う、うん・・・」
(まるで)
眉をきゅっと寄せて頬を膨らませて俯く。
何を期待するでもなかったのに、自身は熱を篭らせてしまうというのに。
頬が熱くなると同時に、心が冷えるのを感じた。
(・・・なんでも、なかったみたい)
サクラは己の不埒さを呪った。





「―――――待たせた。なんだって?」
「みんながサスケくんのお誕生日お祝いしようって・・・」
聞きなれたテノールに条件反射で振り返ると、上半身裸のままで髪を拭うサスケがいた。
「・・・言ってて」
ソファに座りなおしたサクラの目の前に立ちはだかり、漆黒の瞳が翡翠のそれを覗き込む。
「サクラ、お前さ」
「なに」
すい、と逸らした白い顎を骨ばった指が捕えた。
その指を振り払うように立ち上がったサクラをサスケが訝しげに見上げる。
明らかに避けた仕草に握りこんだ自身の指先が冷えていくのを実感した。
緊張しているのだ。
そんなサクラの不審に、サスケが一歩近づく。
「それで、避けてねぇつもりか」
サスケから逃れようと更に一歩後退したところで、サクラの左足がソファに引っかかってそのまま座り込んでしまう。
なんて失態。
ソファに座り込んだサクラの両サイドをサスケが腕を着いて、閉じ込める。
どこも触れていないというのに、心臓が高鳴る。未だ上半身裸のサスケの体温を近くに感じる。
息が苦しい。
サクラを覗き込むように、サスケが面の角度を変えてきた。
まるで口付けられてしまいそうだ。
「だめ、触らないで」
サクラが口早に拒絶し、漆黒の瞳が怯んだ。
「・・・――――厭だったか?」
何を、と問うまでもない。
一度きりの逢瀬を言っているのだ。
違う、とサクラは頭を振る。
「違わねぇだろ」
意味がわからず、苛立つサスケに心が恐縮する。
「違うんだもん」
「・・・何だよ、それ」
俯いて真直ぐ睨んでくる漆黒の瞳から逃れる。
その眸には勝てないことを、サクラは知っていた。
「違うよ」
「何が」
「だって、違うんだもん」
「何が」
「わたしと、サスケくんの気持ちが」
サスケは目を眇めて、考える素振りを見せた。
もしくはサクラの意図を見出そうとしているのか。
俯いたままのサクラには、サスケの影を追うだけしかできず、何もわからなかった。解らなかった。



「何考えてんのか知らねぇけど」



「もし、違うなら、教えてやる」



サクラの肩が、強い力で押し遣られる。
突然のことで態勢を整えようと身構えたサクラの細腰を、大きな手のひらが触れ、そのまま横抱きにするようにソファへ押さえつける。
突然のサスケの暴挙に、サクラは掠れた悲鳴を上げたが、それに構わずサスケはサクラの首筋に唇を押し付けた。
首筋に纏わりつく濡れた感触と、サスケの荒い呼吸に、サクラは身を竦ませる。
待ち望んだ世界は余りにも見えずにサクラに恐怖を与えた。
「や・・・っ」
執拗に肌を舐られる恥辱に、思わず圧し掛かるサスケの裸の胸板を押す。体温が手のひらから伝わってサクラの抑え込んでいる欲情が掻き立てられる。
それに恐怖し全身を縮めようと膝を立てたそのアクションが、短いスカートを捲った。日焼けしていないほっそりとした太腿の奥に下着が露わになる。
骨ばった指先が無遠慮に内腿を這い渡って下着を剥ぎ取った。
サクラの脚の間にサスケの裸の胴が入り込み、未だ閉じられたままの脚の奥の秘められた花を無防備に曝す。
そんなサスケの所作に、衣服を纏ったまま、けれども何よりも隠したい秘処を無防備に曝され、サクラの恥辱心は限界を超える。
呼吸を乱しながら全身を力ませ恐怖を現すサクラに、サスケの影が落ちる。
ぶつかる、と眸を閉じると、宥めるように情熱的に口付けた。
「俺がどれだけ・・・っ」
口付けの合間、息継ぎに離れた唇の隙間からサスケが吐き出すように告白する。
サスケの途切れた言霊を知りたくて、求めようと開いた唇は再び塞がれた。
サクラを覆う布地を乱暴に肌蹴ながら、サスケの熱を持った手のひらがサクラの肌に触れる。
耳たぶに触れ、首筋から胸元を通り、乳房を揉みしだいて、快楽に未だ不慣れな乳首を暴く。
痛みを伴うほど幼い性感帯を指先で摘まれ、背筋を強張らせたサクラに構わず、きつく唇を吸い上げられた。
「んぅ・・・っ」
身体の芯に植え込まれていく熱に耐えられず、華奢な下肢をサスケの太腿に押し付ける。
それに気づいて、サスケが脚を揺らすと強請るように脚が絡みついた。
重なった箇所が濡れていくことに、恥辱に涙を溜めたサクラにサスケは首を振る。
容赦なく、それでも優しく。
サスケの指先はサクラの肌を侵していく。





そして。
口付けを解くと同時に、サスケの指が、サクラの花弁を、撫でた。





衣服はすべてサスケの手により剥ぎ取られ、白い肢体はソファにぐったりと上体を沈ませた。
広げられた足を直す気力も残っていないのか、大きく割り広げたまま太股の間では熟れた花弁がひくつき、薫る花蜜が淡く茂る若草をしっとりと濡らしていた。
その奥の桃色のクレヴァスから愛蜜が滲み出て、臀部を伝ってソファすらも蜜が零れた。
花弁のすぐ上で充血に喘ぐ花芯も、彼女が呼吸を繰り返すたびに痛々しく震えて熟れ切っている。
サクラが呼吸を繰り返すたびに上下する乳房もサスケの唾液に塗れ、その頂点で起立した乳首は赤く染まり痛々しく―――――更に彼の欲情に火をつけた。
自分だけが愛することを許された桜色の花びらをうっとりと眺め。



「サクラが考えていることも残酷だけど」



膝裏と背中に腕を差し入れ、ソファに沈み込んでしまった華奢な肢体を抱き上げる。
急な浮遊感に小さな悲鳴を上げて、サクラの腕がサスケの首筋に巻きついた。



「俺はもっとヒドイことを考えてる」



耳元で囁いたテノールに、細い腕に力が篭る。



「絶対」



サスケの言葉に、サクラがすがるように、怯えるように纏わりつく。
けれども背に回った柔らかな腕は彼のサディズムすら享受するかのように優しく。
抱き上げたことで近づいた頬を柔らかく擦り合わせ、ぴたりとパズルのピースが填まるような感覚にリンクする。
サスケの足が一歩を踏み出した。











ナルト筆頭に同期達が大人しく飲み潰れていることを祈るばかり。



ブラウザバックプリーズ






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