17回目の慰霊祭が終わり、慰霊祭の進捗と日報を提出して、本日の春野サクラの勤務は終了した。
今朝宣言したとおり、これから18回目のナルトの誕生日を7班で祝うのだ。
「あ、ナルトこんなとこに居たの」
「サクラちゃんとサスケだったら、ここには寄るだろうなって思って」
当直の忍が度々利用する休憩所だった。
常ならば何人か上忍がいるのだが、今日に限っては未だ慰霊祭の後片付けや任務に赴いたのかナルト以外いなかった。
「サスケくんもそろそろ来るんじゃないかな。さっき火影室で会ったから。もうちょっとここで待ってよ」
サクラは長いすに座るナルトのすぐ隣りに腰を掛けて人心地する。
落ち着いたサクラと笑い合って、ナルトは満悦だ。
「今まで慰霊祭に、あんまり感慨なかったんだけど」
ナルトがぽつりと零し出した。
「慰霊祭って・・・オレの父ちゃんと母ちゃんの命日だ」
うん、と桜色の髪が頷く。
「ずっと独りだったから、父ちゃんも母ちゃんもいなくて当たり前って思ってたけど、オレにも父ちゃん母ちゃんっていたんだよな」
「ミナトさんとクシナさんが居たから、アンタが生まれたんでしょ」
ナルトはうんうんと唸って、そうなんだよな、と肯いた。
無意識なのか、額当ての縁をなぞって言葉を捜している。
ナルトが考え事をするときのクセだった。
「サクラちゃんやサスケやイルカ先生やカカシ先生達と、みんなと一緒にいるようになって、一人でいるのってしんどいなって思うようになってさ」
サクラは翡翠の瞳をナルトに向けて、言葉を促す。
「でも、今オレがここにいるのは、イルカ先生が認めてくれて、サクラちゃんとサスケもオレを認めてくれて、一緒に居てくれるようになったからなんだろうな」
うんと微笑むサクラに、ナルトも応える。
口角を上げたナルトが、ふと嗚咽を堪えるように奥歯を噛み締めた。額当てを弄っていた右手は目元を覆う。



「オレ、子ども時代ホントに辛くて辛くて死にたかったけど、生きてきてよかった・・・!」



ナルトの告白に、弾かれたようにサクラが振り返る。
ぐいと強引にナルトが自身の目元を覆う手のひらを引き寄せて、青い瞳を覗き込む。
「泣いてねえよ」
ニシシと笑ってみせるナルトに、サクラは眉を顰める。
「サクラちゃんの前では、ぜってー泣かねぇ」
何それ、と嘆息を吐くサクラに、ナルトはニカリと白い歯を見せた。
宣言どおりナルトはサクラの前では泣かないんだろう。サクラは柳眉を切なげに寄せて、ナルトの傍らに座りなおした。
小さな沈黙が落ちて、隣りの体温が心地良い。
二人きりの空間で、緊張もなくゆるやかに時間が過ぎる。
「・・・オレさ、チャクラの記憶でしか会ったことねぇけど・・・母ちゃん、サクラちゃんに似てて」
「わたしに?」
ぽつりと話したナルトだったが、話しているうちに話の軸にブレが生じたのか、ふむとナルトは首を傾げて言葉を切った。
考えながら頭をグラつかせている。瞑った瞳も考えているのか睡魔と闘っているのか危ういところだ。
「どこがって・・・わかんねぇけど、なんか、なんとなく、どっか・・・」
曖昧に話をするナルトを見ると、身体を揺らし、瞼も落ちかけている。
「・・・ナルト、疲れちゃった?」
「んー、なんか、眠いかも」
ナルトは大きな欠伸を一つして、身体を傾け隣りに座るサクラの太股に頬を寄せた。
「オレがサクラちゃん好きなのって、母ちゃんに似てるからなのかな・・・」
独りごちてナルトはそのまま瞼を閉じた。
突然のナルトの所作に、思わず立ち上がりそうになるサクラの内腿にはナルトの手が添えられてしまって、固まってしまった。
すぐに穏やかな寝息が聞こえてきて、サクラの太股を温かな吐息がくすぐる。
(・・・他意はないんだろうな)
小さく嘆息して、力を抜いた。
絶対の安心感を委ねるように甘えてくるナルトの所作に、ナルトの母親―――クシナが施せなかった母親の愛情を思うと心が疼いた。
きっと、母親になるとはこういうこと。
「おやすみ。ナルト」










「・・・何をしている・・・?」
気付けば傍らにサスケが立っており、少々驚いた。
「サスケくんも、お疲れ様」
「何をしていると、聞いた」
いつも通り抑揚のない声だが、機嫌が悪い。サクラは気まずげにサスケも疲れているのだろうかと見上げると、黒い瞳は迷わずナルトを注視している。
「慰霊祭で疲れたみたい。眠いって言って、そのまま寝ちゃって」
体力の限界まで動くんだから子どもだよね、とサクラの膝の上で穏やかに眠りに落ちたナルトの硬質な金髪を、サクラの白い指が撫でる。
くすぐったかったのか、ナルトは僅かに身を揺すって柔らかな太股に頬を埋めた。
その仕草に少しだけ笑って、サクラはサスケを見上げる。
「カカシ先生もまだ戻ってこないし、ナルトが起きるまで・・・えっ」
鈍い音とサクラの悲鳴は同時だった。
「きゃぁっ! ・・・サスケくん!」
サスケの踵がナルトの腰椎を捕えて蹴り飛ばし、無抵抗だったナルトはそのまま床へと吹っ飛んだ。
突然のことにナルトに駆け寄ろうとしたサクラの前に、サスケが立ちはだかる。
「痛てえぇ・・・よくわかんねぇけど、目ぇ覚めたぞ・・・」
ナルトは蹴り落とされた床からむくりと起き上がり、何度か目をしばたかせて状況を把握しているようだ。
「サスケェ・・・てめぇか」
「表へ出ろ。組み手を施してやる」
黒髪が顎をしゃくって金髪を挑発する。
んだコラ、と怒り露わな青い瞳を見据えて黒い瞳は最後通達を達した。





「誕生日祝いだ。―――――喜べ、本気を出してやる」














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