「サクラちゃんはサスケの誕生日、何かしたの?」
「何かしたって・・・これからじゃない、サスケくんのお誕生日」
火影室からの帰り道、偶然居合わせたナルトと帰路に着く。
ここ数日、“体調不良”により任務から離れていたため、ナルトと合うのも先日の飲み以来になる。
首を傾げるサクラに、ナルトが瞬いた。
「え、だって、7月13日・・・こないだ皆でお祝いしたじゃんか」
「だからアンタ“おめでとう”なんて言ってたの?! サスケくんは7月23日! 明後日よ」
ええぇ、とうめいてナルトは唇を突き出した。
「日にち間違えるし、クスリ効かねぇし、オレのサプライズが台無しじゃん・・・」
ぶぅぶぅと頬を膨らませるナルトの頬を、サクラの手が掴んだ。
「クスリって、何」
「や、そんな、クスリってほどのもんじゃ・・・」
「何」
「サスケが男になれるおまじないを・・・」
おまじない? と眉を顰めるサクラに、ナルトは得意げに目をきらめかせた。
「サイがくれたんだけどさ、すっげぇんだぜ、フツーの媚薬と違って自我を持ったまま向精神作用があるから拷問に―――――・・・だッ!」
サクラの拳がナルトの脳天を直撃した。
わずかに落ちかけ、それでも耐えるようにナルトが面を上げる。
「なんで! なんでぶつの、サクラちゃん?!」
「―――――ばか」





「サスケくんに完全嫌われた」
しばらくしてから、ようやくぽつりと発生することが出来た。
絶望がサクラを余すことなく覆い被さっていた。
膝を抱えて小さく蹲ったサクラに倣って、ナルトも隣りにしゃがみ込む。
「なんで」
「わたし、自惚れてたの。もしかしたらって」
こないだ、理解不能に乱れたサクラにサスケは忍耐強く付き合ってくれた。
いくら身体を重ねたことあるからといって、欲しがるサクラに従順だった。サクラに快楽を植え付けて、サスケの指先がサクラの身体に触れないところはなかった。
しかし。
本来ならばサスケが服用するはずだった媚薬を、誤ってサクラが服用してしまった―――――その贖罪だったのだ。
サスケなりに侘びのつもりだったのだろう。
死んじゃいたい、と呟いたサクラに、ナルトが絶叫した。
「え?! 何で?! ・・・サクラちゃん、まさか、オレってば・・・」
「もう何も言わないで・・・ナルトがそんなの用意してたのにも、飲み物に入れてるのにも気付かなかった自分の責任だって叱られたの。たまたまサスケくんが近くにいたから・・・助けてもらえたけど、そうじゃなかったらどうなってたかだなんて自己責任だよ」
サスケに咎められた諸事を思い返す。尤もなことだ。
火影補佐の人物が、あってはならないことだ。
「アイツ、すっげーガキだからさ! サクラちゃんがオレとかシカマルとか、他のヤツと一緒にいるだけで眉間に皺寄ってるじゃん!」
サスケ君の眉間に皺が寄ってるのはいつものことだよ、とサクラは頭を振って唇だけ動かした。
「・・・“ちがう”って、言われたし」
こないだ“嫉妬なのか”と思わず問うてしまった答えは、NOだった。当たり前だ。
何を思い上がったものだろうと、サクラは過去の己を殴り倒したい想いに腸が煮え繰り返る。
もう消すことのできない過去に、しょんぼりと、淡色の眉をすっかり下げることしかできなかった。
ナルトが複雑な表情をしている。哀れんでいるのかもしれない。
いよいよ自分が可哀想だ。
顎が下がって、自然と俯いてしまう。
「サクラちゃん!」
サクラの気を引くようにナルトが声を上げる。
面を上げると、真摯な瞳をしたナルトがサクラだけを見つめている。
「サクラちゃんはさ! 欲しいものってないの?!」
「欲しいものって・・・何よ、急に」
ナルトは大きく息を吸った。サクラの右手をとって、聞き逃すなと云うように。
「オレはサクラちゃんが好きだから、サクラちゃんの全部が欲しいよ! すげぇぎゅーってして、サクラちゃんを丸ごと可愛がりてぇもん!」
突然のナルトの告白に、サクラの面が瞬時に色づく。
「サクラちゃんは、サスケが好きだっていうのに、そういうのはないの?!」
あまりの直球に嘘が吐けなくなる。
本音を吐露したいのは、いつだって変わらないことだけれど、自分を護るためにいつしか虚勢を張るようになったというのに。
サクラは唇を引き結んで、嗚咽を堪えた。奥歯を噛み締めすぎて唇が震える。
「欲しいよ! 全部欲しいよ! だって好きだもん、当たり前じゃない!」
言葉を発するたびに涙が零れる。
そして意を決したように、その言葉を紡ぐ。
「・・・でもどうしようもないじゃない、嫌われてるんだから」
口にしたら、サスケに嫌われていることを現実にするようでたまらなかった。
知っていることだけれど、目を背けていた事実。
「どんなに好きだって言ったって、スリーマンセルで組んでるから話してくれるくらいの接触しかしてくれないのに」
サスケがサクラを見るときの眼差しを知っている。
そして、逸らされる漆黒のそれすらも。
「もう傷つきたくないもん、うざいって・・・嫌いだって言われること判ってて、好きだなんて言えるわけないじゃない!」
言い切ったサクラに、ナルトは目を細めて微笑んだ。





「オレってば・・・やっぱりサクラちゃんを好きでよかった」









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