すっかり日も落ちて、照明を落とした部屋のベッドに蹲る姿を確認する。
サクラの体内に蓄積された媚薬の作用はどうやら消えたようだ。
泣きすぎて目の周りが赤く腫れてしまっている。
気を失っているのか眠っているのか―――サスケは眼を瞑っているサクラの目元と額に冷えたタオルを置いてやり、その首元に手の甲を当てて体温を測る。
媚薬の副作用なのか長時間続けた性行為のためか、発熱してしまっていた。
頑健なる男の自分ですら、身体の節々や背筋、内腿や―――何より腰椎に鈍い痛みがついて回っているほどなのだ。
いくら受け手であったにせよ、快楽を追えるほど性行為を重ねた経験もなく、体力の限界を超えた性行為は負担にならないはずがない。
先ほど触れたサクラの首筋に指を這わせ、サスケがサクラの皮膚に施した口付けの痕を確認する。
もし自分しかサクラを抱いたことがないのであれば、サクラが媚薬の効果に気付くのが遅れたのは当たり前で―――未だ、性行為によりサクラが快楽を得たことがないことをサスケは識っていた―――サクラの様態の変化に気付いた自分に安堵と、もし己以外の人物以外が“それ”に気付いた時のことを考えると腸が煮えるほどの吐き気を覚える。
―――――いずれ。
任務とはいえ、サクラは見知らぬ男の手に堕ちることがあるだろう。
もしくは、任務ではなくサスケ以外の男の手をサクラの意志で取ることもあるだろう。






「・・・―――――う・・・」
目覚めた翡翠が苦痛に歪み、鈍くうめいた。
「サクラ」
サスケくん。
そう、唇が動いた。
サスケは手に持っていたミネラルウォーターを口に含むと、そのまま身を屈めてサクラに口付ける。
サクラは昨晩とは打って変わってサスケの接触にびくりを身を引きかけたが、やがて流れ込んでくる水分をうっとりと受け入れた。
「・・・お前は隙がありすぎる。ナルトが異物混入したことに気付かねぇとか、媚薬の作用に気付くのが遅れるとかありえねぇ」
唇を離して、諾々と受け入れたサクラを咎めるようにサスケが呟く。
昨晩のあられもない淡い痴態が未だにサスケを魅了して止まない。
―――――もし一緒にいたのがナルトやシカマルだったとしたらどうするつもりだったのか。
何より、当初サクラは一人で帰ろうとしていた。サスケがナルトとのやり取りからクスリの作用を察しなかったとしたら、どうしていたというのだ。
サスケは言いようのない胃のムカツキを、盛大に溜め息を吐くことで落ち着かせる。
そんなサスケの所作にサクラはもごもごと珍しく言い澱んだ。言い訳を聞いてやろうとサスケは眉を上げる。
「サスケくんだって・・・」
なんだ、と睨むと翡翠の瞳は毛布に包まってしまった。
「―――――お前は。俺じゃなくても“練習”になれば誰でも良かったんじゃないのか、ナルトが良かったんじゃないのか!?」
思わず大きな声が響き、毛布ごとびくりと身を固めたのに舌打ちを噛み殺した。
蹲る毛布の塊は細かく震えている―――泣いているのだ。
いつだって泣かせているのだ。もしくは、気鬱に顰める伏せた眼差しをさせている。
突き放すような己より、好意を明らかにするナルトに表情をくるくると変えて楽しそうにしているサクラに焦れる思いを認識している。
きっと頭部があるだろうふくらみを、毛布の上から形をなぞるように撫でてやる。
「そのくせいざって時に俺を拒絶して、ナルトを呼ぶじゃねぇか―――――・・・お前は何がしたいんだ」
「サスケくん」
いつの間にか翡翠の瞳も、春色の髪もシーツから起き上がっている。
信じられないようなものを見るように、翡翠は真っ直ぐにサスケを見つめている。



「・・・嫉妬・・・?」



サクラがぽつりと呟いた言葉に、瞬時にサスケの首から頭部までもが真っ赤に染まり。
だがしかし、突如目の前に突きつけられた、初めて自覚した感情を受け入れられるほどうちはサスケは成長を遂げておらず。
ちがう! と珍しいサスケの怒声がうちは邸に響いた。









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