(―――――昔の、夢を見た気がする)
音も光も落ちた室内で、サクラはひっそりと意識を浮上させた。
湿気を含んだシーツの上で、後ろからサクラを抱き込まれている腕の感触に、より現実を認識する。
(ナルトと、カカシ先生と、サスケくんと)
7班を結成して初めてのサクラの誕生日に、7班のみんなが奮闘してくれたのだ。
なんて幸せな記憶。
それこそ指を繋ぐだけのささやかな接触だけで眠れない夜を過ごすほどに。
あの時はその瞬間が幸せだった。
幸せは永遠に続くものだと信じて疑わなかった。
しかし、無欲で無垢だった恋心はいつしか欲張りで貪欲へと変貌を遂げた。
「・・・起きたのか」
後ろから耳たぶに唇を寄せられ、掠れたテノールが囁く。
振り向くことで肯定すると、当たり前のように正面から抱き寄せられ、当然のように口付けを与えられた。
そのままシーツに組み敷かれ、優しくねぶるキスに心が震える。
思い出をなぞるように、春野サクラは再びうっとりと瞼を閉じた。











気付けば3月28日はとうに過ぎ、カーテンを暁が赤く染めていた。
濃厚な吐息が室内に篭り、与えられる口付けに応えてすがりつくように精悍な背中に腕を回す。
結合部を軽く抉る動きでは物足りず、サスケの腰に脚を絡めて最奥を誘った。
(わたしは)
サクラの白い躰にサスケの白い躰が重なる。
発汗も手伝って、両者はぴたりと吸い付く。
それでも重なり合うことがなく。
ほんの少しの隙間でも埋めたくてぎゅうぎゅうに抱きついて境界線ゼロを求めた。
今、こんなに近くにいるはずなのに、いずれ訪れる別れに逆らうことができない。
13歳の時に知った離別は抗うことが出来た。
そして今までに多くの死を見届け、受け入れざるを得なかった。
忍をやる上で―――この世に生を受けたときに定められた死からは何人たりとも逆らうことも抗うこともできないことを知ってしまった。
(ほんの少しでいい)
一緒に過ごす時間が1分、1秒と多くあればいい。
共に過ごせる確約がないならば、サクラから繋ぎとめるしか術はないのだ。
込み上げてくる不安と激情に、思わず嗚咽が零れる。
それを拾ってか、サスケが強引に口付けてきた。
「ん・・・ふ・・・っ」
合わさる唇ももどかしかった。
どこかぴたりと合うところが合うはずだと、角度を変えて幾度も口付ける。
息継ぎの隙にサスケの舌先が強引にサクラの口腔を侵し、弱い場所を暴いていく。
サスケの誘う舌先に恐る恐る舌先で触れると、乱暴に絡み取られて荒々しく吸い上げられた。痺れる舌先は厭らしく絡まされて、サスケを受け入れた結合部から愛蜜が大量に溢れ出たことに腰が震える。
「サスケ・・・くん・・・っ」
サクラの膣内に沈んでいたサスケ自身に強請るように腰を揺らす。
サスケは口付けを解くことなく、それでも分かっていると言うようにサクラの頬を撫でて本格的に動き出した。
サクラは思う。
この幸せがずっと続くものではないことは知っている。
永遠は有り得ないことだということも知っている。
だから。
できればずっと一緒に居たいのだけれど。
できれば愛されているのだと思いたいけれど。
できればサスケの子どもを授かりたいけれど。
(サスケくんがいてくれるなら、もう何もいらない)
―――――決して、声には出さないけれど。
だけど。





再び意識が浮上した時、サクラはベッドで一人だった。
カーテンは開かれ、陽光がフローリングを白く照り付けている。室内ところどころにある金具すらも陽光を受けて輝いた。
(サスケくん、もう起きたのかな)
どんな時でも厳しい人だ。鍛錬をいつだって怠ることはない。
何より、サスケよりサクラが先に起き出すのをひどく嫌う。
一夜にして孤独となった彼にとって、独りで目覚める朝は悲しみの始まりでしかなかった。
夜を共にするとき、彼は眠らずサクラを抱き寄せていることに気付いたのも、いつからか。
サクラを束縛するくせに、サスケはふらりとサクラの目の前から平気で居なくなる。
独りになるのも平気なくせに、サクラを逃さず距離をあけない場所にいて。
サスケの後を追うべく、シーツの温もりを追おうと左手を伸ばした時に視界に入る、光るプラチナ。
なんだと身を起こす。
何も身に着けていないサクラの素肌に、たった左手の薬指にいつの間にか嵌められたそれが何かと、考える。
「サスケくん・・・っ」
まさか、と思えると心が震える。
彼の想いもそうあるのだと。まさかと。





考えあぐね、ベッドの上で泣き出したサクラをサスケが見つけるのは3分後のことである。






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