「今日も任務ごくろーさん。明日から里外の任務だからな。昼前には里を出るからくれぐれも遅刻しないよーに」
カカシの言葉にナルトとサクラが即座に反論する。
はいはい、と適当に聞き流して、カカシはサクラを見て思い出したように声をかけた。
「そうだ。今日は・・・」
「あ―――――! カカシ先生、今日ってばオレと何か約束あっただろ?」
カカシの言葉にナルトが被さって大声を上げる。
そしてそのままぐいぐいとカカシの背中を押して先を促す。
「そうだ、アレアレ。カカシ先生がオレの修行に立ち合ってくれるんだってば、な?! カカシ先生!」
「えー? 今日はサクラ・・・」
「行くってばよ、カカシ先生!」
サクラはカカシに声を掛けられたというのに最後まで聞けず、カカシに詰めようとしたところでナルトにガードされた。
「じゃな! サクラちゃん! サスケ!」
ぶん! と腕を振って、ナルトはカカシの背中を押したままいつもと反対側に帰っていった。
いつにないナルトの態度に呆ける。
「何なの・・・?」
あれだけ毎日誕生日がどうのこうのと騒いでいたナルトだというのに。
おめでとうの一言もなしか、とサクラは内心がっかりする。
そうだ、とサスケと取り残されたことを思い出し、振り返っていつも通りの誘いの言葉をサスケにかける。
「サスケくん、一緒に帰ろ!」
いつも通り無言で背中を向けられるが、それを承諾と心得て勝手に後ろを付いて行く。
一つ歳をとっても変わらない日常。
誕生日の日も7班のみんなと―――サスケと一緒に過ごすことができたと、頬が緩む。
アカデミーに居た頃なら、絶対に叶わなかった願いだ。
ふと、サスケがこちらを振り返っていることに気付いて、背筋を伸ばす。
「ど、どうしたの、サスケくん」
一人でにやけていたのを見られただろうかと、両手で口元を隠す。
みっともないところばかりを見られている。
「今日・・・誕生日なんだろ」
え、と声が漏れる。
もしかして独り言を漏らしていたのだろうかとか、思考を読まれたのだろうかとかぐるぐると渦巻くサクラの思慮を余所に、サスケは続ける。
「何かねーのかよ。欲しいもんとか、食いたいもんとか」
「ないよ!」
言い切って、物凄く不機嫌に眉を寄せたサスケに、頭を振る。
ちょっと待って、と先日ナルトに話を振られたときにどう答えたのかを思い返す。
(ああ、そうだ、あの時わたしは)
少しだけ躊躇って、少しだけ調子に乗った。
「じゃ、じゃあ!」
なんだ、とサスケが顎をしゃくって促してくる。


「手を、つないでも、いいですかっ?!」


「・・・は?」


ぽかんとしたサスケに、完全に想定外の欲求をしたのだと、サクラは自分が思い余ったことを認識する。
第一、 受諾されたところで快諾のはずがないではないか。
欲張った自分を叱咤する。
「――――イヤ、だよね! ごめん、言っただけ。・・・言ってみた、だけ」
手のひらをぎゅうと握り込んで、緊張に震える。
言ってしまった感が拭えなくて、恥ずかしさにたまらなくなる。
視線を外して、握り込んだ掌を背中に隠す。
まるで手品のタネがここにありますよと言わんばかりの下手くそな嘘だった。
なんたる悲惨、とサクラが引っ込みつかなくなったと同時に、後ろに隠した左手を取り上げられた。
握り込んだ掌を温かな掌に包み込まれ、じゃんけんのグーがパーに包み込まれるような不恰好な手のつなぎになった。
やはりこれは違うだろうとサスケは思い直したようで、一度包み込んだ掌を外して、手のひらをサクラに差し伸べた。
差し伸べられて、何も考えずに手を差し出す。
何これ、とサクラが思うと同時に強引に手を引かれて、そのままサスケが歩き出した。
「他は」
「え」
「他は、何かねぇのかよ」
仰ぎ見た隣りのサスケはチラリともこちらを見ず、前を見据えていた。
繋いだ手がじわりと汗ばんで恥ずかしい。
手をつながれる前に、せめて手のひらを拭っておけばよかったと今更のことを考えてしまう。
緊張で強張る自分の指先が冷たいのが、サスケの温かい手のひらごしに分かる。
心なしかサスケの手のひらも体温より上がってるように思えて、再び隣りを見ると明らかに視線を外されてしまって、そっぽ向いた耳たぶが赤く染まっているのが答えを教えてくれた。
いけない、と思いながらも喜びが留められなくなる。
「・・・なんだよ」
「だって、サスケくんが、優しい・・・」
ふくくと笑うと、咎めるように繋いだ手をぎゅっと強く引き込まれた。






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